QIを活用した質の改善

QIはもともと、米国の行政がナーシングホームの質を効率的かつ公平に評価するという監査を目的として開発されました(【米国】ナーシングホームへのQIによる評価の導入を参照)。その後、介護サービスの利用者や家族がケアを受ける施設を選択する際の情報としても活用されるようになっています。しかし日本においては、現状ではすべての施設が統一してMDSでアセスメントを行うことは困難であるため、上記のような監査や情報提供のための活用は現実的ではないのが現状です。こうした状況のわが国においては、各施設が自施設のケアの質を向上させるためにQIを活用することが、その施設にとっての大きなメリットとなると考えられます。

以下に、QIを用いたケアの質改善の方法を説明します。

1)質が低い可能性のある領域を把握する
ケアの質を改善するためにはまず、自施設においてケアのどの部分が得意分野であるのか、どの部分が不得意分野であるのかを把握することが重要です。QIは、その項目により値が大きく異なるため、異なるQI間で補正値の大きさの比較をしても意味がありません。そこで、すべてのQI項目の補正値の平均値とばらつきの大きさを統一した状態にそろえること(標準化)で、異なるQI間の比較が可能になります。この結果を施設単位でレーダーチャートのグラフに示すことで、全体と比較した自施設の相対的な値を知ることが可能になります。

レーダーチャート

レーダーチャートにおいて「0」の太線の円は、全体平均であり、0よりもグラフの値が低い方がケアの質が高い、0よりもグラフの値が高い方がケアの質が低いことが示唆されます。つまり上の図では、「疼痛管理」と「転倒」で全体平均よりも値が高く、ケアの質が低い可能性があるということを示しています。したがってこの施設では、現在実施されている疼痛管理と転倒のケアに問題がないかを、重点的に検討すべきであることが分かります。

このように、複数のQI項目について同時に、それぞれの全体平均と比較することによって、自施設のケアの得意分野と不得意分野を把握することができるため、不得意分野における焦点をしぼった質の改善活動が可能になります。さらに、QIの値の変化を定期的に確認していくことで質改善活動の効果を客観的に評価でき、対策の見直しにも効果的です。

2)QIの分子に該当した利用者を特定する
自施設のケアの質に問題があると考えられるQI領域を特定したら、次に分子にどの利用者が該当したのかを把握します。「個人別実測」の表において、「1」の記された利用者を確認します(図2)。例えば「13.転倒」については、ID「005」「023」「028」「029」の4名が該当します。さらに「個人別予測」の表により、それらの利用者のうち「統計的には分子に該当する確率が低かった利用者」を特定します。「転倒」の予測値は、ID「005」「028」は24%と転倒のリスクが高い利用者である一方で、ID「023」は5%、ID「029」は7%と転倒リスクが低いにもかかわらず転倒が発生した利用者であり、ケアの再検討が必要と考えられます。

個人別実測・個人別予測

3)ケアの適切性を検討する
 2)で特定された利用者について、以下の視点を踏まえて個別ケアの適切性を見直します。
・アセスメントは適切であったか
・ケアプランの内容は適切であったか
・ケアプランは適切に実施されていたか
・モニタリングは適切に行われていたか

以上の見直しを行った結果、利用者の個別の状況によって仕方ない(ケアの質の問題とはいえない)という結論に至ることもありますが、もしケアとして改善の余地があるのであれば、それを次のケアや施設としての方針に取り入れるようにします。

この一連の見直しによって、QIの結果が漠然とした質の評価ではなく、個別具体的なケアの評価およびケアの質の向上につながることになります。