本研究会では主に、高齢者の包括的アセスメントツールであるMinimum Data Set (MDS) のデータを用い、QIの取り組みを進めています。MDSは、米国でナーシングホームにおけるケアの質の評価・保証を目的として開発されました。ケアの質は、行政により従来から行われてきた人員配置基準(入所者当たりの看護師数等)や運営基準の充足という「構造 (structure)」の評価だけでは的確に把握することができないため、ケアの内容 (process) やADLの低下等のアウトカム (outcome) を客観的に把握するためのアセスメント表が必要になったのです。1991年には、ほぼ全米のナーシングホームに対してMDSの導入が義務づけられ、入所者のアセスメントが定期的に行われるようになりました。

しかし、MDSのアセスメントデータのままでは、施設間のケアの質を比較することが難しかったため、MDSデータをもとに算出するQIが開発されました。米国では、監査目的での活用に加え、Nursing Home Compare (NHC) というウェブページで各ナーシングホームのQIの値が公開されており、利用者・家族自身が各ナーシングホームの質を比較した上で選択を行うことが可能になっています。

米国のナーシングホームで用いられているQIの24項目を表1に示します。QIには、「10.留置カテーテル」や「22.毎日身体抑制」などケアの内容を評価する「プロセス」の指標と、「1.新たな骨折の発生」や「17.最近のADL低下」などケアが行われた結果、利用者がどのような状態になったかという「アウトカム」の指標があります。

表1 米国で使用されるナーシングホームのQuality Indicators (QI)
表1 米国で使用されるナーシングホームのQuality Indicators (QI)