健康保険組合連合会
「患者分類に基づく慢性期入院医療の質の評価等に関する調査研究」

~平成20年度医療保障総合政策調査・研究基金事業~

 

事業の目的

平成20年度診療報酬の改定により、慢性期医療 (医療療養病棟) において、Quality Indicator (QI) による治療・ケアの質評価の仕組みが導入されました。これは、医療療養病棟単位で、1) 褥瘡、2) ADLの低下、3) 尿路感染症、4) 身体抑制について「治療・ケアの内容の評価表」(図1) により発生状況の評価を行い、該当患者に対して適切なケアが実施されているかを「治療・ケア確認リスト」(図2) を用いて確認し、治療・ケアを見直していくというものです。

図1 治療・ケアの内容の評価表

図1 治療・ケアの内容の評価表

図2 治療・ケアの確認リスト (褥瘡の例)

図2 治療・ケアの確認リスト (褥瘡の例)

この施策を受け、慢性期医療の質の向上に向けた課題を明らかにするために「健康保険連合会 平成20年度医療保障総合政策調査・研究基金事業」において「患者分類に基づく慢性期入院医療の質の評価等に関する調査研究」のモデル事業が実施されました。

 

事業内容と結果

このモデル事業では、以下の調査と取り組みが行われました。

1.病院への訪問調査
2008年6月~10月の期間に、全国8病院の医療療養病棟を訪問し、当該病棟の医師および看護師長にインタビューを行い、QIが該当していた患者 (例:褥瘡のある患者) の診療録や看護記録等の記録を確認しました。
インタビューの結果、1病院を除く7病院で、制度改定時の2008年4月よりQIの算出を行っていましたが、分子・分母の定義の解釈が必ずしも適切ではなく、正しくQIの算出が行われていない状況もみられました。また、自病棟のQIの数値を把握しているのは、ほとんどの場合が看護師長のみで、病棟スタッフには浸透しておらず、QIが治療・ケアの改善に生かされていない実態が明らかになりました。

 

2.ケアの質と記録の改善
協力の得られた1病院 (3医療療養病棟を有する) でQIに関する調査を行ったところ、3病棟全てで入院患者に褥瘡が発生しており、病棟スタッフの褥瘡ケアに対する知識の不足や記録の不備などが問題点として挙げられました。
そこで、QIによる質改善の対象として褥瘡を選定し、看護師資格を持つコーディネーターが各病棟におもむき、ケアの標準化、質を担保するケアの提供体制および記録書式の改善に取り組みました。具体的にはまず、病棟スタッフ全体を対象にセミナーを開き、褥瘡ケアに対する知識を標準化しました。次いで、「確認リスト」が確実に実施されるよう、看護計画を定型化し、患者の情報を共有化するなど解決すべき問題点を明確にした上で、ケアの技術や記録の方法について個別に指導を行いました。
6ヶ月間の取り組みの結果、QIの数値 (褥瘡の発生割合) は改善しませんでしたが、看護職・介護職間のコミュニケーション機会の増加やスタッフの意欲の向上、カンファレンスの定着、確認リストに対応した記録の充実といった成果があらわれました。

 

ケアの現状や問題点をQIによって客観的に把握する取り組みの効果として、ケアの現場において質改善への認識が高まり、継続的に改善に取り組んでいく土壌が醸成されました。今後は、モデル事業で得られた成果を、ADLの低下や尿路感染症など他のQIにおいても活かし、病院全体および複数の病院に広げていくことが課題です。

 

モデル事業の詳細についてはこちらをご覧ください
 →健康保険組合連合会ホームページ
「患者分類に基づく慢性期入院医療の質の評価等に関する調査研究」報告書(概要版)

 

【参考文献】

1) 健康保険組合連合会:患者分類に基づく慢性期入院医療の質の評価等に関する調査研究(Ⅱ)報告書.平成20年度医療保障総合政策調査・研究基金事業(2009).