インターライ方式について
背景-日本の状況-
公的介護保険導入から10年を経た総括では、「地域包括ケアシステム」の整備が今後の課題とされました。地域包括ケアという概念は多様な意味で使われますが、狭義には、個々人の心身の状態に応じた切れ目のない医療や介護の提供体制の構築を意味しています。しかし介護保険の設立当初から、多職種協働やトータルケアマネジメントなどの重要性は認識されており、介護支援専門員が制度化された根拠でもありましたが、現時点で職種間やサービス間の分断は十分に改善されていないという評価なのでしょう。
MDSからインターライ方式へ
これに対して、われわれが日本に紹介してきたMDS方式は、多職種による利用を前提に共通な言語で開発され、また施設と在宅の連携も施設版(MDS2.1)と在宅版(MDS-HC2.0)の基本項目を同じにすることで、切れ目のないケアを提供するうえで、最適なアセスメント方式という評価を得てきました。こうした実績をさらに発展するため、高齢者ケアの専門家により設立された国際的な非営利組織インターライは、すべての版を再構築した新しい方式を2009年に開発しました。この新たな「インターライ方式」は以下の特徴を備えています。
1)居宅、施設などの様々な場で共通に用いるべきコア項目から出発し、それに各版において追加的に必要なアセスメント項目をモジュール式に加えたので、概念的にも、実際の項目においても、さらに共通化が図られた。
2)これまで施設と在宅で分かれていたRAP/CAPの指針を、新CAP(Clinical Assessment Protocol、ケア指針)に一本化することによって、切れ目のないケアプランを作成するうえで、課題の検討をいっそう行いやすくした。
3)高齢者住宅用のアセスメント方式を整備し、居宅・施設の中間に位置づけるとともに、同住宅に固有な項目としてインターネット利用等の活動、生活への満足を加えた。
日本版インターライ方式の特徴
統合版アセスメント表およびマニュアル
インターライ開発のオリジナル版では、アセスメント表の項目記号は、セクションも含めて各版によって各々異なっています。また、英語版をはじめてとして各国で翻訳版が発刊されているアセスメントマニュアルも、それぞれ別冊されており、CAPも独立した1冊の本となっています。これに対して、インターライ日本では地域包括ケアのニーズに応えるために、居宅・施設・高齢者住宅のすべてのアセスメント項目の記号番号を統一化したうえで、これらのマニュアルも統合するべきだと考えました。インターライ本部の許可を得て、世界で初めて居宅・施設・高齢者住宅の各版を統合し、さらにCAPも加えたマニュアルが2011年11月に刊行されています。